知られざるイソフラボンとIGF-1の関係とは?

イソフラボンはさまざまな健康効果を持つ成分として知られていますが、その作用がどこから来ているのかは、意外と曖昧です。今回は、その答えとなりそうな情報を、書籍「血液学の研究グループが偶然見つけた髪を再び生やす新理論」より抜粋して紹介します。 薄毛対策には直接関係ありませんが、健康的な身体づくりやアンチエイジングに深く関わることです。見識を広げると思わぬところで役に立つこともありますから、ぜひ参考に目を通して見てください。
イソフラボンの健康効果は、実はIGF‐1の作用だった⁉
イソフラボンは、結果的に体内でIGF‐1を増やす作用を発揮していました。これも、私たちの研究ではじめて明らかになったことでした。
大豆に含まれるイソフラボンと言えば、生活習慣病などを予防する健康に良い成分として以前からよく知られています。つまり、抗酸化作用があるので組織の老化やガンの予防に効果がある、抗菌作用があり、また免疫力も上げる、さらに血中コレステロール値や中性脂肪値を下げる、といった健康効果が知られていました。
イソフラボンの構造は女性ホルモンのそれと似ており、そのため体内で女性ホルモンと同じような作用をすると考えられていました。女性ホルモンが減少することで始まる更年期障害などにも効果があると言われています。
これらのイソフラボンの効果は、実はすべてイソフラボン摂取によって増加したIGF‐1の効果である可能性が考えられます。イソフラボンがIGF‐1を増やすということがわからなかったために、イソフラボンの健康効果のメカニズムの解明に関する研究は先に進まなかったのでしょう。
そもそもイソフラボンが注目されたのは、大豆を多く摂取する女性には乳ガンが少ないという疫学的な結果があったからです。
ところが最近になって、イソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンの受容体と弱く結合するためにエストロゲン様作用を発揮するが、乳ガン細胞では、そのエストロゲン受容体に作用することで、エストロゲンによる乳ガンの発症を抑制するのではないかと考える研究者が増えてきました。
イソフラボンが乳ガンの発症を抑制することは確かなことです。しかし一方で、イソフラボンがエストロゲンの受容体に結合して、エストロゲン様作用を発揮したり、阻害したりするということでは、イソフラボンの効果をうまく説明できません。
実は、イソフラボンがエストロゲン受容体に結合するというのは、実験室のシャーレの内部で起こった現象にすぎません。まるごとの生命の中では、その事実だけで、イソフラボンの作用をすべては説明できないのです。
シャーレの中の出来事を、そのまま体の中で起こると考えてしまうと、このような自己矛盾した説明が誘導されてしまいます。
イソフラボンのエストロゲン様作用というのは、体にもともと備わっている成長因子の一つ、IGF‐1の作用です。IGF‐1がエストロゲン様作用を発揮し、NK細胞を活性化して免疫力を上げたり、また、乳腺でエストロゲンを作るアロマターゼという酵素を減らして、更年期に起こりやすい乳ガンの発症を抑制していると考えられます。
試験管内の実験結果と実際のまるごとの生体の中で起こっていることを強引に結びつけてしまうのは、試験管内の実験の解析技術が進んだ現在の科学研究ではしばしば認められることです。
やはり、生体で起こっている生物現象を最も重要視し、そのメカニズムを説明しうる補完的な意義を、試験管内の実験結果に求めるべきでしょう。さまざまな専門家がたくさんのお金を使って行っている基礎研究の成果が実際にはなかなか世の中の役に立たないのは、このような実験結果の解釈にも原因がありそうです。
引用:血液学の研究グループが偶然見つけた髪を再び生やす新理論
この記事で引用した書籍の著者
[経歴]
- 1978年 熊本大学医学部卒業
- 1982年 熊本大学大学院医学研究科修了(医学博士)
- 1988年 熊本大学医学部助手(臨床検査医学講座)
- 1991年 日本学術振興会特定国派遣研究員としてウィーン大学医学部へ留学
- 1992年 熊本大学医学部講師
- 1996年 熊本大学医学部助教授
- 2005年 名古屋市立大学医学部医学研究科教授
- 2012年 名古屋Kクリニックを開院
血液学を研究する中でカプサイシンが持つ育毛効果を発見。それを応用して、カプサイシンとイソフラボンによるIGF-1育毛理論を確立し、独自性の高い薄毛治療を実践している。
著書

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ヨムトニック編集部からヒトコト!
イソフラボンが女性ホルモンの様なはたらきをする、というのはよく知られています。女性ホルモンには髪の成長期を長くする作用がありますから、イソフラボンを摂取することで多少なりとも育毛効果があるはず、という説も見受けられます。
しかし「血液学の研究グループが偶然見つけた髪を再び生やす新理論」では、こうした影響はイソフラボンが体内のIGF-1を増やすことによってもたらされる、という可能性に言及されています。
結果は同じですが、その仕組みを知っていれば、別の形に応用することもできます。最近はウェブで手軽に情報が手に入りますが、結論だけに囚われず、しっかりその根拠を追いかけていきたいところです。
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