医師の意見は?薄毛対策シャンプーの選び方

もっとも手軽に取り入れられる薄毛対策の1つに、シャンプーがあります。しかし、いざ製品を選ぶとなると、どれを決め手にしていいのか迷ってしまいますよね。そこで今回は、書籍「最強!の毛髪再生医療 - 豊かな髪と再び出会える本」より、シャンプーの成分について記述されている個所を抜粋して紹介します。
使うならアミノ酸系界面活性剤配合のシャンプー
「シャンプーも石けんも使わないでお湯だけで髪を洗っていれば抜け毛は減り、髪はフサフサになる」と、一般的に指導されていることと真逆な指導をする皮膚科医もいます。実はこれ、私的にも正解だと思います。
ただし、子どもの頃からずっとシャンプーを使い続けてきた世代は皮脂線が発達してしまっていますから、お湯洗髪だけでは髪がベタベタになり、一時的には不快です。
1カ月ほど経つと、シャンプーの刺激がなくなった皮脂線は皮脂を過剰に出さなくなりますから、不快な症状は収まるようです。
しかし、やはり髪をお湯だけで洗うのは気持ち悪いという方は、石油系界面活性剤ではなく、アミノ酸系界面活性剤配合のシャンプーを使うことをおすすめします。
実は、当院でも頭のかゆみを訴える患者さんが非常に多く来院します。私は石油系界面活性剤でかぶれているのではと考え、自分で作ったアミノ酸系界面活性剤配合シャンプーを患者さんに試していただきました。
その結果、明らかにかゆみは減り、並行して抜け毛も減りました。ただ、プラセンタや漢方生薬、ハーブなども配合しているためか、稀にかぶれる方がいますが、そういう方を除く90%以上が抜け毛が減ったとおっしゃってくれます。今、自分でもこのシャンプーを使っているのですが、髪を洗ってできた泡で、ついでに洗顔もしています。
アミノ酸系シャンプーは硫酸系シャンプーのように洗顔しても、いつまでも落ちないヌルヌルなどの不快感がないのが大きな特徴です。さらに髪のダメージが少なく、質の良いシャンプーはそれだけでサラサラの艶髪になりますので、リンスやトリートメントは不要です。実は私は後頭部に頑固な湿疹があったのですが、このシャンプーを使っているうちに湿疹は消え去り、洗髪時の抜け毛も明らかに減りました。
別にこれは宣伝ではありません。私のつくったシャンプーではなくても、石油系界面活性剤ではなく、アミノ酸系配合シャンプーを使用することは、お金を使う意味があると思います。なお主なアミノ酸成分には、ラウロイルメチルアラニンNaやココイルグルタミン酸Naなどがあります。ぜひご自分に合ったシャンプーを探してみてください。
さて、注意すべき石油系界面活性剤の名前も実際に挙げておきましょう。
- スルホン酸ナトリウム
- キシレンスルホン酸アンモニウム
- パレス―3硫酸ナトリウム
- パレス―3硫酸アンモニウム
- ラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム)
- ラウリル硫酸アンモニウム
- ラウレス硫酸ナトリウム(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩)
- ラウレス硫酸アンモニウム
これらを配合すると、とても洗浄力が高く安価に大量生産できるので、実は多くのシャンプーに配合されています。高価なシャンプーなら入っていないと思われがちですが、意外にそうではないので、買う前に成分をチェックする必要があると思います。
お手元のシャンプーにこれらの成分が含まれているのであれば、違うシャンプーに替えてみることをおすすめします。
抜け毛の原因になる石油系界面活性剤
皮膚科医として避けてほしい化学物質は、石油系界面活性剤だと述べました。石油系界面活性剤にはタンパク質を分解する作用が強く、洗浄力が高い反面、コラーゲンを支えているエラスチンにダメージを与えるため、シャンプーなどに入っていると、たるみや抜け毛の原因になります。
代表は「ラウレス硫酸ナトリウム/アンモニウム」ですが、これは洗浄力が強い分、刺激も大変強い薬品です。硫酸は髪も肌もドロドロに溶かしてしまう物質ですから、微量といえども経皮吸収されることを考えると、シャンプーを選ぶ時は「シリコンかノンシリコンか?」などということよりも、「石油系界面活性剤が入っているかいないか?」に気を付けたほうがいいでしょう。
肌はもちろん、毛穴や頭皮からもいろいろな成分が吸収されます。そのため、極力体に良い成分を配合し、硫酸系界面活性剤フリーのシャンプーがいいでしょう。もちろん、リンスやトリートメントは不要です。
化粧品や石けんの品質が良いと、たとえステロイドが配合されていなくても、アトピー性皮膚炎が改善されるのは期待どおりでしたが(私がつくった石けんによるアトピー性皮膚炎改善効果については学会発表しました)、シャンプーは期待以上でした。品質の良いシャンプーだとリンスやトリートメントを使わなくてもツヤツヤの髪になります。
逆に、リンスやトリートメントを使わなければゴワゴワの髪になってしまうのであれば、それは皮膚科医としておすすめできるシャンプーではありません。
発毛、育毛はできなくても、抜け毛が減れば薄毛は改善します。そのために外側からできることは頭皮を傷めないことです。
湯シャンをする、品質の良いシャンプーを使う、シャワーに塩素除去ノズルを付ける、なるべくヘアトニックなど使わない、可能であれば毛染めやパーマを控えるなど、化学物質による影響を排除して、頭皮を傷めないことが重要となります。
手が荒れてしまっている患者さんの大半は手洗いを頻繁にしています。同じように、頭皮を清潔にし過ぎると抜け毛の原因になってしまいます。育毛剤でかぶれて余計に抜け毛が増えてしまっている方もしばしば来院しますが、それでは本末転倒ですね。
薄毛に病気が隠れていることもある
急に薄毛になった場合、体の中に何か異常が生じている場合があります。主な症状としては膠原(こうげん)病、甲状腺疾患(こうじょうせんしっかん)、糖尿病、肝臓病、腎臓病などですが、動脈硬化で血流が悪くなっても生じる可能性があります。
また、女性の場合は分娩後に乳汁分泌ホルモンの影響で一時的に抜け毛が増えることもあります。心配なら一度皮膚科を受診したほうがよいかもしれません。
また、このように体の健康と薄毛が直結する場合もあることを考えると、普段の生活習慣にも気を付けたほうがよいということになります。中でも生活で一番意識してほしいのは、しっかり睡眠を取ることです。
睡眠の役目は、免疫細胞やホルモンの力により、昼に受けたダメージなどを寝ている間に修復することです。肌や髪の代謝は夜に行われるので、寝る時間が少なくなれば、髪の修復も当然手薄になっていきます。毛髪へ栄養が送られにくくなることで、薄毛を促進させる可能性が高まるのです。
発毛は血流に大きな影響を受けることは明らかになっています。血流は交感神経と副交感神経という神経に左右されています。活動時には交感神経が働いて、血管が収縮するため、体の末端にある頭皮まで血流が届きにくくなります。
逆にリラックスしている時や睡眠時には副交感神経が働き、血管を拡張させますので、頭皮に充分な量の血流が供給されます。
ストレスがかかっている時は交感神経が働きますので、「ストレスは避けるべき」といいたいところですが、日々の生活の中でそれは難しいことでしょう。せめて睡眠時間を意識してみてはいかがでしょうか。
副交感神経の働きが最も活発になる22時から翌2時までが「ゴールデンタイム」と呼ばれ、成長ホルモンが最も出やすい時間帯です。ですので、この時間を目安に睡眠時間を調整するのがいいでしょう。
とにかく夜は早く寝て、朝に趣味などを楽しむ生活を、可能であれば実践したいものです。「早起きは三文の得」と言いますが、早起きは髪にもお得なのです。
真面目で完璧主義な人ほどストレスが溜まりやすいということもありますので、上手に発散することが大事になるでしょう。
また、ひとつの物事に没頭するタイプには薄毛が多いのも事実です。あまり突き詰めないで、気楽に生きるのが髪にはいいのです。
この記事で引用した書籍の著者

[経歴]
- 皮膚科医・漢方医・美容皮膚科医
- 日本皮膚科学会認定専門医
- 慶應義塾大学漢方医学センター非常勤講師
- 浜松医科大学漢方医学講座非常勤講師
- 日本医療毛髪再生研究会所属
- 日本抗加齢美容医療学会員
静岡と千葉に美容クリニックを展開。西洋医療と漢方を用いた東洋医療をミックスし、他院にないユニークな治療を実践している。漢方を用いた皮膚病治療を広めるため、日本各地で医師向けの講演会を実施するほか、美容関連書籍も執筆するなど、精力的に活動している。
著書

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ヨムトニック編集部からヒトコト!
ふだん当たり前のように使っているシャンプーですが、中には抜け毛の原因になりうる成分を含んだものもあるのですね。正しい知識を身に着けて、なるべく髪にやさしい製品を選びたいところです。
本書、「最強!の毛髪再生医療 - 豊かな髪と再び出会える本」には、こうした薄毛についての専門知識が幅広く解説されています。もし薄毛について勉強したい、というモチベーションを持っているなら、ぜひ購入して全編に目を通してみてください。