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薄毛に関する疑問を徹底解剖!

公開日 2021年4月7日

再生医療による新たな治療法を目指して(横浜国立大学インタビュー)

近年、脱毛・薄毛によるQOL(生活の質)の低下は、非常に大きな社会課題に捉えられ始めています。 それを、育毛剤、植毛、マッサージなど様々な方法で解決しようと多くのサービスが提供されています。 それに対し、再生医療という、今までとはまったく違う新たなアプローチで、この課題を解決しようとしている研究者を、ヨムトニックの取材班は発見しました。

それが、横浜国立大学の景山達斗助教です!

よろしくお願いいたします!!

プロフィール

横浜国立大学 景山達斗助教

岡山出身、筑波大学の修士課程を卒業後、横浜国立大学で博士取得(‘17)~現職
JSTさきがけ 研究員、神奈川県立産業技術総合研究所 研究員 などを歴任する。
専門分野は、生物工学およびバイオマテリアル開発で、日韓バイオマテリアル学会若手研究者交流AWARD(‘18) を受賞するなどの実績をもつ。
“髪の毛の悩みを解決したい”という思いで、日々研究に勤しむ若手研究者

景山達斗:岡山出身、筑波大学の修士課程を卒業後、横浜国立大学で博士取得(‘17)~現職
JSTさきがけ 研究員、神奈川県立産業技術総合研究所 研究員 などを歴任する。
専門分野は、生物工学およびバイオマテリアル開発で、日韓バイオマテリアル学会若手研究者交流AWARD(‘18) を受賞するなどの実績をもつ。
“髪の毛の悩みを解決したい”という思いで、日々研究に勤しむ若手研究者

まず、現在取り組まれている研究概要を教えて下さい

再生医療を用いた、新たな薄毛・脱毛の治療法の確立を目指しています。

現在の薄毛・脱毛の内科的な治療法としては、「発毛剤による治療」があります。 早い段階で投与することにより脱毛の進行予防を狙うものですが、脱毛が進行した後だとあまり効果を示さないという課題があります。

また、薄毛・脱毛の外科的な治療法としては、「植毛治療」などがあります。 髪の毛の濃い部分の毛根をくりぬいて、脱毛の部分に植え直す治療ですが、髪の毛の全体の本数自体は変わらず、脱毛の進行は抑制不可能です。なので、脱毛が進行する度にくり返し、植毛し直さなければならないという課題があります。

そこで、私たちが注目したのが「再生医療」です。脱毛のステージ問わず治療を施すことができ、髪の毛の本数を増やすという脱毛症の根本的解決にも繋がるとおもいます。


そもそも、一般的に脱毛症の原因として何が考えられるのでしょうか

脱毛症は、喫煙や食事、ストレス、遺伝などの原因により生じていると言われています。

また、男性型脱毛症 (AGA) は全年齢平均で約30%が発症すると言われています。 初めは多少産毛が生えていても、髪の毛が小さく伸びなくなり、徐々に産毛もなくなって禿げてしまうケースが多いです。


その脱毛症の新たな治療法としての、再生医療について詳しく教えて下さい。

再生医療では、毛髪の発生プロセスをヒントとしております。その中で鍵となるのが「上皮系細胞」と「間葉系細胞」です。この2つの細胞が混ざり、髪の毛の種である「毛包原基」という組織が生まれます。これを、再生医療でつくってしまおう、というコンセプトです。

具体的には、髪の毛を数本程度取り出し、そこに存在する「上皮系細胞」と「間葉系細胞」を増やしていきます。そして、この増やしていった細胞で「毛包原基」を大量に培養し、脱毛部に移植することで髪の毛を再生するといった技術です。実用化されれば、数本の髪の毛から、数千本の髪の毛を生み出すことが可能になります。


現在、どのような課題があるのでしょうか。

過去の技術だと、髪の毛の種である毛包原基を顕微鏡の中で1つ1つ作製する必要があるので、大量に作製するのは不向きでした。実際の治療においては、少なくとも数千~数万個程が必要で、実用化を進めるうえで毛包原基を大量に作製する技術の開発が課題でした。

私たちは、偶然にも細胞培養に適さない培養容器の中で上皮系細胞と間葉系細胞を三日間培養すると、細胞自身で毛包原基を形成してくれることを発見しました。

それを大量に培養するべく、様々な環境を生み出して実験を繰り返しました。そして独自の大量培養容器をつくり、非常に簡便な作業で数千個の毛包原基を作製する技術を開発しました。

簡便かつ大量に培養することができた秘密とは、何でしょうか?

私たちは、大量培養容器の素材に着目しました。

一般的な培養容器はプラスチック製のシートでできているために、容器の下から細胞に酸素を供給することが出来ません。この状態では、細胞に十分な酸素を与えられておらず、活性を失った細胞は毛包原基をうまく形成できません。

そこで、酸素透過性の高い素材でシートを作成し、細胞の上下から酸素提供が可能な環境を生み出しました。これにより、細胞が自発的に毛包原基を形成してくれるようになりました。

また、この毛包原基をマウスの背中に移植しても髪の毛が生えてくることが確認できました。また、発毛脱毛といった髪の毛の生え変わりも同時に確認できています。

今では、直径10cmの容器の中に4000個程の、細胞の培養が可能なくぼみを備えたシートも開発しており、ここに培養液を入れることで、シンプルな過程で4,000個もの毛包原基を一度につくることができるようになりました。


安全性やコスト面はいかがでしょうか。

安全面の課題に関しては、がん化のリスクが指摘されているiPS 細胞等ではなく、患者自身の細胞を使うことで安全性を確保していきたいです。今まさに、その検証を倫理委員会の承認のもとで行っています。

また、コスト面での課題に関しても、解決していけると考えています。 費用は、植毛では1000個の髪の毛を移すの約100万円かかると言われており、旧来の再生医療の技術だと一般的にはその数十倍から数百倍はかかると言われています。しかし、本研究の大量培養技術では、大量培養のために高価な装置を必要とせず、培養容器さえあれば、必要量の毛包原基を作製できるため、旧来の再生医療の技術より安価に医療を提供できると考えています。


今後、私たちの手にはいつ頃届くのでしょうか。

5~10年後にクリニックで医療提供開始できるよう動いています。2018年からヒト細胞を用いた基礎研究を開始しまして、2023年には臨床試験の開始を目指しており、一早く皆様にお届けできるように研究室のメンバーと共に頑張っております。


最後に、今後の研究への意気込みをお願いいたします。

私は、最終的には男女や年齢等関係なく、様々な場面での脱毛の悩みが解消されるような社会を目指したいと思っています。例えば、抗がん剤の治療経験者の約10%程度は元の髪の状態に戻らなかったり、頭部の怪我により部分的に毛が生えていないお子さん等がいらっしゃいます。そのような幅広い悩みに対しても、コストの低い安全な治療の選択肢として提供できるようにしたいです。

ありがとうございました!!

以上、景山達斗助教でした!!